2024年9月 吉崎柳歩選
課題 「パネル」
集句 144句
入選 19句(うち佳句4句、秀句2句)
入選句
1 結論が出ないパネルディスカッション 大木雅彦
2 外見を整えるため貼るパネル 高浜広川
3 肖像画パネルにされて照れている 澁谷さくら
4 パネルほど饒舌でない試供品 福村まこと
5 候補者のパネルの顔は加工済み アカエタカ
6 炎天下ソーラーパネルだけ笑顔 山宗雲水
7 ソーラーに草野球場乗っ取られ 星野睦悟朗
8 太陽をタダで使っているパネル 西山竹里
9 オーダーをタッチパネルに阻まれる 休鶏
10 タッチパネル操れないと食えぬ寿司 西山竹里
11 タッチパネルに指がおどおどしてしまう 青砥たかこ
12 乾燥指タッチパネルは知らんぷり 竹平和枝
13 注文のタッチパネルを任される 髙杉 力
佳句 老いの手にタッチパネルというバリア 竹中正幸
佳句 八月のパネルが語る非戦論 八木五十八
佳句 太陽光パネルで息ができぬ山 春日綾乃
佳句 時間切れ喋り足りないパネリスト 西岡ゆかり
秀句 太陽光パネルと寿命競い合い やんちゃん
秀句 一日で出来たパネルの家に住む 八木五十八
選 評
佳句 老いの手にタッチパネルというバリア 竹中正幸
この句で言う「バリア」とは障壁のことだろう。コンビニでさえタッチパネルの操作を強いられる。成人であると自ら年齢認証しないと、ビールも売ってくれないのだ。
佳句 八月のパネルが語る非戦論 八木五十八
非戦と不戦とは微妙に違うようだ。非道な原爆を二度まで落とされた日本。悲惨な地獄絵図が訴えるのは、二度と戦争はしないという非戦論なのだ。
佳句 太陽光パネルで息ができぬ山 春日綾乃
ニンゲンは口と鼻を使って呼吸しているが、山はどうやって呼吸しているのだろう。やはり山麓の森林帯なのだろう。太陽光パネルで樹木も動物も窒息してしまうのか?
佳句 時間切れ喋り足りないパネリスト 西岡ゆかり
パネルディスカッションのパネラーは、その問題について一家言ある人が選ばれているので、喋り足らないまま幕切れになることが多い。司会者の腕も試されている。
秀句 太陽光パネルと寿命競い合い やんちゃん
太陽光パネルの寿命は思ったより短いようだ。一度据え付けたら終生使えるのかと思っていたが、せいぜい25~30年程度らしい。30代で新築で取り付けても定年までに寿命が来てしまう。子どもが住んでくれるのなら取り替えてもいいが…。
秀句 一日で出来たパネルの家に住む 八木五十八
近所の広大な田んぼや畑地が整地されて、あっという間に瀟洒な住宅が建ち並んだ。工場生産のパネルを大型トラックで運んで来てクレーンで組み立てる。どれも四角いサイコロのような建物だが、住み心地はどうなんだろう? ともかく、地震には強そうだ。