2023年1月 吉崎柳歩選
課題 「飾る」
集句 125句
入選 12句(うち佳句3句、秀句2句)
入選句
1 飾らない性格だけど厚化粧 船岡 五郎
2 生前を飾る言葉は聞けぬ死者 戴 けいこ
3 有終の美を飾らせている弔辞 西山 竹里
4 飾られた美談が独り歩きする 赤松 重信
5 生真面目に親の写真を飾る部屋 天根 夢草
6 お飾りの来賓とてもよく喋る 木村 行吉
7 トイレにはトイレに似合う花飾る 青砥 たかこ
佳句 お雛様飾りそこだけ春にする 村上 佳津代
佳句 貧相に見られぬ程度には飾る 橋倉 久美子
佳句 飾っても自慢できない参加賞 西岡 ゆかり
秀句 耳飾りつけ貧相になった耳 天根 夢草
秀句 着飾って弾かなくていい駅ピアノ 芦田 敬子
選 評
佳句 お雛様飾りそこだけ春にする 村上 佳津代
3月の声を聞いてもまだまだ寒い。炬燵もストーブもまだ片づけるわけにはいかない。だが、雛人形を飾るとたちまち春になる。「そこだけ」が効いている。
佳句 貧相に見られぬ程度には飾る 橋倉 久美子
貧相に見られるのは家ではなく自分自身なのだろう。生まれつきなのか寄る年波のせいなのかは不明だが、貧相なのを自覚している。健気ではないか!
佳句 飾っても自慢できない参加賞 西岡 ゆかり
参加したら猫でも杓子でも頂ける参加賞。貰ったら嬉しい参加賞なら無きにしもあらずだが、飾って自慢できそうな参加賞は確かに少ないだろう。
秀句 耳飾りつけ貧相になった耳 天根 夢草
本人は、耳飾りを付けて輝きを増したと思っているのに、耳が貧相になったと言う。「福耳になった耳」と詠んでくれてもいいのに、川柳作家とは意地の悪い人種なのだ。
秀句 着飾って弾かなくていい駅ピアノ 芦田 敬子
発表会や演奏会なら「着飾って」弾かなくてはならないだろう。駅ピアノも同じ公衆の面前で弾くものなのに、なぜ着飾らないでいいのだろう? 同じ公衆でも「通りすがりの人たち」で、演奏料も取れないからか?