川柳展望 ネット句会

結果発表


2024年1月 吉崎柳歩選

 課題 「靴」

 集句 154句 

 入選 26句(うち佳句4句、秀句3句)


入選句

 1  老人の足に馴染んだスニーカー     大木雅彦

 2  ヒールより体には良いスニーカー    椎野良子

 3  子に軍靴履かせぬために投票所     甲斐良一

 4  3Kを支える長靴の誇り        アカエタカ

 5  ひと休みしろとほどけた靴の紐     橋倉久美子

 6  テレワークもう革靴は磨かない     アカエタカ

 7  歩いたら充電できる靴欲しい      あやめみのり

 8  履きなれた靴と真新しい靴と      大木雅彦

 9  マンネリを抜け出したくて履くヒール  休鶏

10  革靴で嵌りたくない水溜まり      戴 けいこ

11  長靴が瓦礫の山に立ちすくむ      多川義一

12  シンデレラの靴は売られてない靴屋   樋口りゑ

13  時時は見た方が良い靴の裏       三村 舞

14  振り出しに戻って靴を履き替える    山﨑あそか

15  靴音が揃うと碌な事が無い       八木五十八

16  かかと踏まれてスリッパになった靴   橋倉久美子

17  靴に入る小石が邪魔をする会話     冬子

18  頼られて靴がだんだん重くなる     冬子

19  靴べらの助けがないと履けぬ靴     西山竹里

佳句  結局は捨てると決めた登山靴      芦田敬子

佳句  老醜をさらしてもよい登山靴      柴田比呂志

佳句  背の高さ少しカバーのできる靴     青砥たかこ

佳句  聞き覚えある靴音が聞こえ出す     西田峰春

秀句  靴履いて軟弱にする足の裏       戴 けいこ

秀句  ライバルに靴のサイズで勝っている   甲斐良一

秀句  履き癖が付き僕だけの靴になる     北田のりこ

選 評

佳句   結局は捨てると決めた登山靴     芦田敬子

 あれほど親しんできた山登りも何かをきっかけに途絶えることになる。いつか再開する積もりではあったが、結局は捨てることになる。人生の哀歓。

        

佳句   老醜をさらしてもよい登山靴     柴田比呂志

 老醜をさらすことになるのは、登山者である自分と履き古した登山靴の両方であろう。老醜をさらした登山靴は勲章だが、登山はもう自重したほうがいいだろう。

  

佳句   背の高さ少しカバーのできる靴    青砥たかこ

 カバーできるのは10㎝ぐらいまでだろうか? 身長が1m60㎝ならカバーできるのは6%強に過ぎない。やはり「少し」の範疇であろうか?

            

佳句   聞き覚えある靴音が聞こえ出す    西田峰春

 飼い犬のことを詠まれたわけではないだろう。ドアが開いていれば親友や知人の癖のある歩き方(靴音)は聞きとれるのかもしれない。

               

秀句   靴履いて軟弱にする足の裏      戴 けいこ

 猿人もホモサピエンスも、当時は裸足だったのだろう。文明開化までは日本人は草鞋を履いていた。伊能忠敬は草鞋を履いて4千万歩を踏破したのである。靴を履きだしてから軟弱になった現代人の足の裏。力士の足の裏は少しマシか? 

         

秀句   ライバルに靴のサイズで勝っている  甲斐良一

 ライバルがいるから自分も頑張れる、成長できるとは言うが、ライバルに負けて悔しくないはずはない。ましてやライバルは容姿端麗、女にもよく持てる。唯一勝っているのは靴のサイズだけだと嘆いている。足相撲なら勝てるかもしれない。

       

秀句   履き癖が付き僕だけの靴になる    北田のりこ

 サイズが合っているから履き心地が良いわけではない。各人特有の歩き方、歩き癖というものがある。つれあいと同じで、靴がそれらを理解してくれて、つまり履き癖がついて初めて自分だけの靴になるのだ。いつまでも大事にしてやろう。