2023年5月 吉崎柳歩選
課題 「カバー」
集句 132句
入選 11句(うち佳句3句、秀句1句)
入選句
1 所詮無理息子の不祥事のカバー 三村 舞
2 もうカバーしきれなくなるシミとシワ 橋倉 久美子
3 カバーするための帽子が手放せぬ 橋倉 久美子
4 何にでも妻はカバーを掛けたがる すずき 善作
5 脱着にふとんカバーは骨が折れ 坂本 加代
6 二匹目のどじょうを狙うカバー曲 坂本 加代
7 オゾン層のカバーで生きられる地球 西山 竹里
佳句 体力が気力をカバーして余生 宮本 信吉
佳句 したことにカバーをかけて被爆国 戴 けいこ
佳句 体型のカバーは難しい水着 西岡 ゆかり
秀句 カバーする人のカバーが要る介護 松長 一歩
選 評
佳句 体力が気力をカバーして余生 宮本 信吉
普通なら、体力を気力でカバーして余生を送る、とするところだが、この句は逆。気力は萎えてきたが体力はまだ自信があるのだろう。普通ではないところが良い。
佳句 したことにカバーをかけて被爆国 戴 けいこ
この場合の「カバー」は「覆いをする」という意味だろう。もちろん唯一の被爆国として、核爆弾の非人道性を訴えること自体は間違いではない。だが、朝鮮半島や中国、東南アジアの人々に対しては非人道的な侵略者だったことを忘れてはならない。
佳句 体型のカバーは難しい水着 西岡 ゆかり
ここで言う水着は海女さんの衣装ではなく一般的な水着のこと。ビキニはもちろんセパレートだって必要最小限の布地でできている(よく知らんけど…)。貴景勝やムーミンの体形をカバーすることは確かに難しい。
秀句 カバーする人のカバーが要る介護 松長 一歩
老々介護やヤングケアラーの実態が社会問題になって久しい。介護とはまさしく、自力だけでは日常生活ができない人をカバー(補助)すること。その介護者にも疲労はどんどん溜まっていく。介護者にも介護がいる現状を鋭く突いている。