2025年7月 𠮷崎柳歩選
課題「明日」
集句 161句
入選 17句(うち佳句3句、秀句2句)
入選句
1 暗い日もあるが明日と書く明日 森下博史
2 ポイントが倍になるから明日買う たごまる子
3 浴びるほど飲もう明日は休肝日 宮尾柳泉
4 明日までは待てぬ入院即手術 大澤 葵
5 12時で魔法がとけるシンデレラ 隼人
6 明日こそ明日こそはと見る夕日 髙杉 力
7 どうしても明日の扉が開かない 真田義子
8 明日の分までは書いたりせぬ日記 西山竹里
9 翌日と明日が違う顔をする 安藤なみ
10 明日咲くつもりで少しゆるむ花 橋倉久美子
11 明日からは違う自分になれる本 金子鋭一
12 明日というカードも底をついてきた 八木五十八
佳句 明日という物置部屋を持っている 甲斐良一
佳句 バンジージャンプ明日の事は考えぬ 芦田敬子
秀句 兵隊に行けば明日死ぬこともある 天根夢草
選 評
佳句 明日という物置部屋を持っている 甲斐良一
「物置部屋」が何のメタファーであるかは選者に任せている。私は「ゆとり」だと解釈した。一休さんの「あわてないあわてない」ですね。違っていても文句は言わせない。
佳句 バンジージャンプ明日の事は考えぬ 芦田敬子
いきさつはともあれ、バンジージャンプ(比喩であるにしても)をしなければならない状況になってきた。妻子のことも仕事のことも、全てはこれをやり終えてからのことなのだ。
佳句 明日また読んでから出すラブレター 西山竹里
心を込めて書いたはずのラブレターだからこそ、誤字脱字はもちろん、気持ちが伝わるかどうか読み直しておかねばならない。まるで論文を見直すように詠ってあるところが愉快。
秀句 兵隊に行けば明日死ぬこともある 天根夢草
敗戦後の平和憲法下の日本では、こういう句が詠まれることはなかったと思う。しかし、ウクライナとロシアの戦争や、拡大してきたポピュリズムの成り行きでは、日本にも徴兵制の復活も無きにしも非ずだろう。ひとたび兵隊になれば上官の命令には逆らえないのだ。
秀句 わたくしの意見も聞かず明日が来る 木村行吉
「わたくし」がこの世に存在してもしなくても明日は必ず来るだろう。豊臣秀吉や美空ひばりが死んでも、現に日々は過ぎて来たではないか? まるで万物の創造主と友だちであるかのように詠んでいる。突っ込みをする気にもなれないような傲慢な作者。